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腰椎硬膜外麻酔

少しだけ暑さも和らいできた。でもやっぱり昼間は暑い。熱射病も相変わらず。

ん? 気のせいなのかな。

 

ちょうど今、札幌で開催されている「世界牛病学会に獣医師2名が参加している。

私は”留守番”組で頑張っているけれど、いつもの考えごとに加えて仕事量もそれなりに増えた結果、腰痛が再発した。

 

「痛てて・・とぼやきつつ、鎮痛剤を飲みながら牛さんの“痛み“をせっせと治療している。なんだかな~。

まぁ、この仕事が好きだから、それでもやりたいと思える。

 

”腰”と”痛み”から連想して、

以前書いた腰椎硬膜外麻酔の話題を、もう少し具体的に紹介してみようと思った。

 

腰椎(分節)硬膜外麻酔は、第一腰椎と第二腰椎の椎間に長さが12cmもある専用針を刺して、棘上靭帯と棘間靭帯を貫通し、ピンポイントで黄色靭帯も貫通して、皮膚から深さ10cm弱の硬膜外腔に到達し、局所麻酔薬を注入する方法である。

 

最新の技術でもないわりに、地域にもよるだろうけど現場では十分に普及しているとは言い難い。

理由は皮下や筋肉に局所麻酔薬を注射する方法でも手術は可能だし、若干手間もかかるからだと思う。

でも実際にやってみると、簡単で牛が感じる痛みは格段に少ない。

そしてうまくやれば牛は立ったまま、動かない。(麻酔が強すぎると牛が寝込んでしまうリスクもある)

 

 

↓下はイメージ図。黄色で示した部分がターゲットの硬膜外腔。

 

↓準備する道具。腰椎硬膜外麻酔針はオートクレーブして再利用もしている。

 

 

 

↓事前に刺入部位に局所麻酔をしておくと、牛は暴れにくい。リドカインもしくは塩プロで。

理想的には7cmのカテラン針がいいけれど、この日は忘れちゃった。

 

 

棘上靭帯と棘間靭帯を通過すると大抵は椎骨にぶつかる。その場合は少し戻して針先を前または後に数ミリずらしてまた押し込む。牛は人間みたいに背中を丸めて・・とはやってくれないので、狭い椎間を通すのにグッと押し込まなければならないこともある。難しいときは直腸に手を入れてもらったり、乳房の付け根をつかんでもらうと牛は背湾するが、そこまでしなくても慣れればすんなり、もしくは数回のトライで入ってくれる。

 

黄色靭帯を貫通するときには”プスッ”という感触があり、硬膜外腔は陰圧なので内針を抜くと空気を吸い込む”シューッ”という小さな音がする。もし血液や液体が持続的に漏出したり容易に吸引できたりするのは硬膜外腔に入っていないばかりか、その下のくも膜下腔に達している可能性もあるので注意が必要。(今までそんな経験はないし、硬膜を貫通するのには抵抗があると思うけど。)

硬膜外腔には脂肪組織の層があり、そこに注入しては効きにくい。

だから7mmほど針先を深く進めて脂肪層の下で硬膜に近い部分にゆっくりと局所麻酔薬を注入すると効果的・・。

 

そう教わって訓練してきた。でも実際には硬膜外腔に局所麻酔薬を注入してから15分くらい待つことがより重要だと感じている。

 

現場の手術直前に15~20分も待つのは辛いので、私は手術の準備を始める前にまず腰椎硬膜外麻酔をやってしまう。そうすれば、毛刈りをし手術の準備が完了する頃には結構効いている。丁寧に滅菌ドレープなんかを貼り付けていると、さらに待ち時間を作れる。

 

 

↓この位からもう少し深く進めると椎骨にぶつかるので、微調整して椎間を探る。正中をキープ。左右にズレるとダメ。

 

 

 

↓硬膜外腔に達するとこれくらい入るけど、この深さは個体によってバラツキがある。

局所麻酔薬は抵抗なく入るが、できるだけゆっくりと入れる。

私の場合は2%キシラジン0.3~0.4ml+2%リドカイン4mlに生理食塩水を適量足して総量5mlにしている。キシラジンを入れすぎると牛はふらついてくるので、そのときはアチパメを入れないといずれ座り込む。

大きな牛ならリドカインを5mlにすることもあるが、最近の教科書には体重500kgで8mlと書いてあってもう少し増やしてもいいのかなと思っている。

 

 

 

↓効くと、針を刺しても牛はピクリとも動かない(右けん部)。もちろんメスで切開しても知らん顔。

麻酔は左けん部にも同時に効いている。

 

 

麻酔がよく効いていると、穏やかな気持ちで手術に臨める。

 

 

自分の腰の痛みも穏やかに、

消えてくれないかねー

 

p.s.これを書いていたら朝イチで難産が入った。現実はそんなに甘くない。

腰痛はしばし忘れよう。

 

 

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